研究実績の概要 |
70%を超える肝切除は術後肝不全に陥る危険性が高いとされている.実際の臨床では肝切除後に残肝容積が不十分となる可能性が高い症例においては,術前に経皮経肝的門脈塞栓術が広く施行されており約20~30%の非塞栓肝容積増大が期待できる. Muse細胞は,非腫瘍形成性の多能性成体幹細胞である.Muse細胞にはNanog, Oct3/4, Sox2等の多能性幹細胞マーカーの発現が確認されており,骨髄,真皮,末梢血等より採取できる.Muse細胞は遺伝主導入を施行せず間葉系細胞から単離するのみのため,臨床応用しやすいといった利点がある.門脈塞栓術にMuse細胞移植療法を併用することにより,残肝容積のさらなる増大や肝予備能の改善が得られるか検討することを目的とした. モデルにはC.B-17/IcrHsd SCIDマウスを使用し,全身麻酔下で開腹し,門脈右枝分岐直後の左枝本幹を結紮する. Muse細胞, ヒト骨髄間葉系幹細胞を,経門脈的に投与する.なお,コントロール群は同量の生理食塩水を投与する.術後14日で組織固定し,肝重量,採血,組織学的評価を行い有意差が得られるか検討した. 当初、マウス門脈結紮モデルの作成に難渋したが、マウス門脈結紮モデルの安定した作成に成功し,コントロール群6例,ヒト骨髄間葉系幹細胞投与群11例の手術を施行した.各群の評価は統計学的評価として肝重量,採血項目(T-Bil., AST, ALT, Alb, NH3), 術前後の体重変化を施行している.全体としてヒト骨髄間葉系幹細胞移植群がコントロール群と比較して良好な結果が得られる傾向にはあるものの、統計学的な有意差は得られなかった.Hematoxylin & Eosin染色, Masson trichrome染色においても各群間で明瞭な変化はなかった. 今後、Muse細胞移植群を作成し各群の評価を行っていく.
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