研究課題
本研究では、まず膵頭部癌10例と遠位胆管癌8例のプロテオーム解析から1,820種類のタンパク質を同定し、続いて半定量比較解析法とG検定を用いて、遠位胆管癌と比較して膵頭部癌で有意(p<0.01)に発現を認める5種類のタンパク質、同様に膵頭部癌と比較して遠位胆管癌で有意(p<0.01)に発現を認める10種類のタンパク質を絞り込んだ。これらのタンパク質を検証するため、まず膵頭部癌12症例と遠位胆管癌12症例の検体を対象として15種類のタンパク質の免疫組織化学染色を行い、バイオマーカーとして有望な5種類のタンパク質、KRT17、ANXA10、TMEM109、PTMS、ATP1B1を同定した。次に膵頭部癌72症例と遠位胆管癌74症例を対象として、これら5種類のタンパク質の免疫組織化学染色を行い、両疾患に対する診断精度を統計学的に解析した。その結果、膵頭部癌診断に最も精度が高かったタンパク質はKRT17で、遠位胆管癌の診断に最も精度が高かったタンパク質はPTMSだった。さらに、それらの表現型を組み合わせたバイオマーカーパネルの診断精度を同様に解析した。膵頭部癌の診断に最も有用なバイオマーカーパネルは、KRT17陽性/ANXA10陽性/TMEM109陽性を示す表現型であり、遠位胆管癌の診断に最も有用なバイオマーカーパネルはKRT17陰性/ANXA10陰性/ PTMS陽性を示す表現型であった。最後に、それらのバイオマーカーパネルを用いて、術前臨床診断と病理診断が異なった症例を免疫組織化学的に検討したところ、7例中6例で正診が可能であった。本研究では、網羅的プロテオーム解析を起点として、膵頭部癌と遠位胆管癌を免疫組織化学的に鑑別し得る5種類の新規タンパク質バイオマーカーと2つのバイオマーカーパネルを同定した。
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BMC Cancer
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