研究実績の概要 |
本研究は、熱帯植物より抽出・分離された新規化合物コノフィリン(Conophylline:CnP)の線維化抑制効果を癌関連線維芽細胞に応用し、膵癌の増殖・進展に重要な癌関連線維芽細胞を制御することで膵癌に対する新たな治療法を開発することを目的とした。 CnPは肝の星細胞を抑制を介して肝の線維化を抑制することが知られている。CnPを癌関連線維芽細胞(Cancer associated fibroblast:CAF)に投与した報告はなく、CnPのCAF抑制効果を評価し抑制したCAFが膵癌の悪性度に与える影響を評価した。 CAFにCnPを投与するとコラーゲンIの産生が抑制され、濃度依存性にCAFの増殖抑制効果を認めた。またIL-6, IL-8, CCL2, CXCL12, AngiogeninといったCAFが産生する複数のサイトカインをCnPは抑制していた。 CnPで抑制したCAFの上清(Conditioned Media : CM)を用いて膵癌細胞株(SUIT-2)を培養すると増殖能は抑制され、浸潤能も抑制された。また、既存の抗癌剤であるGemcitabine(GEM)の抵抗性を改善する効果を有していた。 マウスを用いて膵癌細胞とCAFを同時に接種する皮下腫瘍モデルを用いてControl(無治療:no treat),CnP単独治療、GEM単独治療、CnP+GEM治療の4群に分けて治療を行うと、CnP+GEM治療群は他の3群と比較して著明な腫瘍縮小を認めた。 以上より、コノフィリンは膵癌の増殖・進展に重要な癌関連線維芽細胞の増殖・活性化・サイトカインの産生を抑制し、膵癌の治療剤として有効であることが示唆された。
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