研究課題
家族性腺腫性ポリープ症(FAP)は、結腸直腸癌(CRC)の発症素因を伴う多数の結腸直腸腺腫性ポリープを特徴とする遺伝性疾患である。今回我々はInfinium 450K BeadArrayを使用して、7個の癌と16個の腺腫を含むFAP腫瘍23検体に対し、ゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った。比較対象として、The Cancer Genome Atlasおよび公共のデータベースより、297個のCRC、45個の腺腫、および37個の正常粘膜のInfinium 450kデータを使用した。 FAPおよび散発性CRC /腺腫のメチル化情報を二方向性階層的クラスタリング分析を用い解析した結果、散発性CRCが4つのDNAメチル化エピジェノタイプ(ME)に分類されることが明らかになった(高ME(HME)、中ME(IME)、低ME(LME)、正常粘膜に近いME(NME))。 また、5つのFAP腫瘍(2個の癌と3個の腺腫)がIMEでクラスタ化されていたのに対し、18個のFAP腫瘍(5個の癌と13個の腺腫)がNMEでクラスタ化されていた。IMEに属す FAP腫瘍は散発性CRCと同様にKRAS変異と有意に相関していた。しかし、IME症例において、DNAメチル化頻度は散発性CRCおよび腺腫よりもFAP腫瘍において有意に少なく、そしてこれらの非メチル化遺伝子はWNTファミリー遺伝子およびいくつかのタイプの癌遺伝子を含んでいた。以上のことより、散発性CRCおよび腺腫は4つのME(HME、IME、LME、およびNME)に分類されたが、FAP腫瘍は少なくとも2つのサブタイプ(IMEおよびNME)に分類されることが示された。また、 散発的IME CRC /腺腫と比較し、FAPのIME腫瘍は有意に低いメチル化頻度であり、DNAメチル化が散発的CRCの腫瘍形成とは異なることを示唆した。
2: おおむね順調に進展している
当初の検体数より少ない数での解析となった。しかしながら、公共データベースと合わせて解析を行うことで、網羅的な解析が可能となった。そのため、FAP特異的遺伝子の探索にたいしても、WNT関連因子等が上がってきており、以降の実験には支障ないと考えられる。
さらなる検体の増加のため、関連施設を含め採取していく予定である。増加した検体に対し、InfiniumBeadArrayを行うが、今後は450Kではなく850Kの使用も視野にいれて解析を行う。また、今回見つかった遺伝子群に対して機能解析を行っていく予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Oncotarget
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