研究課題/領域番号 |
17K16533
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 玲 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30779682)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腹膜偽粘液腫 / ゲノム / 全ゲノムシークエンス / RNA-Seq / マウスモデル / 網羅的発現解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、希少がんである腹膜偽粘液腫の臨床検体を用いて、全ゲノムシークエンス・網羅的発現解析を行い、病態メカニズムを明らかにすること、また腹膜偽粘液腫で高頻度に変異が認められるKRAS遺伝子変異とGNAS遺伝子変異を大腸特異的に発現させたマウスを作製することにより、臨床応用のためのPMP動物モデルを確立することを目的としている。 本年度は、腹膜偽粘液腫の臨床検体10例を用いて、RNA-Seqによる網羅的発現解析を実施した。網羅的発現解析にて腫瘍組織と正常組織の発現を比較し、クラスター解析にて腫瘍と正常が2群に分かれ、これより明らかに腫瘍と正常では発現profileが異なった 。5747遺伝子が発現変動遺伝子として同定され、特に、複数の粘液産生関連遺伝子がPrincipal component analysisで有意に発現変動していた。これらの遺伝子は、Gene set enrichment analysis(GSEA)を行ったところ、炎症関連因子、epithelial mesenchymal transition(EMT)関連因子、Tumor-necrosis factor α(TNF-α)-NF-kB関連因子などと有意に相関していた。これらより腹膜偽粘液腫は疾患の本体である粘液産生の特徴を有し、病態の基本として炎症が大事な役目をしていることが示唆された。腹膜偽粘液腫のマウスモデル作製については、CDX2-Creにより大腸特異的に変異型GNASを発現させても腫瘍形成はされないが、GNAS, KRASを大腸特異的に発現させると虫垂に腫瘍が形成されることが判明した。病理学的には、腹膜偽粘液腫のように粘液産生過多な所見は得られなかったが、hyperplastic polypもしくはsessile serrated adenoma/polyps(SSA/P)であった。現在、マウスの数を増やして、病理学的所見を観察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腹膜偽粘液腫の臨床検体を用いた全ゲノムシークエンスについて、実験は終了し、現在解析中である。 また、腹膜偽粘液腫のマウスモデル作製については、初回に作成したCDX2-Creマウスにおいて胎生致死が生じて、CDX2-Creマウスの変更を行い、時間がかかった。作製されたマウスにおいて虫垂に腫瘍は形成されたものの、疾患の特徴である著しい粘液産生のフェノタイプは認められなかった。現在はGNAS・KRAS変異マウスおよびKRAS変異マウスについて数を増やし、病理学的に差が生じるのかどうか経過観察している。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜偽粘液腫の臨床検体を用いた全ゲノムシークエンスについて、実験は終了し、現在解析中である。解析終了後、速やかに論文作成に移る。 網羅的発現解析については実験、解析は終了し、現在論文作成中である。 また、腹膜偽粘液腫のマウスモデル作製については、初回に作成したCDX2-Creマウスにおいて胎生致死が生じて、CDX2-Creマウスの変更を行い、時間がかかった。作製されたマウスにおいて虫垂に腫瘍は形成されたものの、疾患の特徴である著しい粘液産生のフェノタイプは認められなかった。現在はGNAS・KRAS変異マウスおよびKRAS変異マウスにて数を増やし、病理学的に差が生じるのかどうか経過観察している。有意差が出ない場合は、Cre-mouseの変更を行うことや、腹膜偽粘液腫の腫瘍組織をヌードマウスに移植してつくる、患者由来ゼノグラフトを行うことを検討している。
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