研究課題
癌幹細胞は、高い自己複製能、造腫瘍能と抗癌剤抵抗性を有するため、癌治療における最大の障壁となっている。われわれは、大腸癌幹細胞においてオートファジー経路と比較してリソソーム経路が特徴的に亢進していることを同定し、リソソーム経路を調節するRab5/7の阻害が癌幹細胞の治療抵抗性に有用である可能性を見出した。本研究では、Rab5/7を標的し、リソソーム経路を阻害するメフロキンの大腸癌に対するドラッグリポジショニングが、大腸癌幹細胞ヒエラルキーを包括的に標的とする新規治療法となる可能性を検討し、さらにはその臨床応用を目指した。具体的には、大腸癌細胞株を用いて、リソソーム (LysoTracker) の蛍光トレーシングを行うことで、大腸癌幹細胞(CD133+/CD44v9+)ではエンドリソソーム活性が亢進していることを見出した。同細胞集団は、単一細胞からの sphere 形成能、造腫瘍性や抗癌剤抵抗性を高く保持していた。また、ケミカルスクリーニングを行うことで、エンドリソソーム阻害剤としてメフロキン(抗マラリア薬)を同定した。メフロキン投与により癌幹細胞集団が消失すること、また、ヒト大腸癌担癌マウスにおいて腫瘍がほぼ完全に消失することを見出した。メフロキンの作用機序の解明ため、アレイ解析とタンパク構造解析を行うことで、メフロキンがリソソーム経路調節因子であるRab5/7を標的とし、ミトコンドリア代謝を抑制していること、Rab5/7を抑制することで癌幹細胞分画が消失することを見出した。同結果より、進行再発大腸癌に対するメフロキン投与の臨床試験と、Rab5/7を上流で制御することで幹細胞の維持を担っている因子の同定を目指している。
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Cancer Research
巻: 79 ページ: 1426~1437
10.1158/0008-5472.CAN-18-2192