研究実績の概要 |
大腸癌にて確立してきた初代培養方法の他癌腫へ拡大すべく、検討を行ってきた。現在、胃癌、膵臓癌、胆管癌、乳癌、肺癌、小児神経系腫瘍、などに関して検討を行い、in vitroでの培養が可能となっている。個々のがん腫により微小環境の維持に必要な因子が異なる事がわかってきたため、効率を上げるべく検討を重ねている。 また、臨床癌と培養細胞の相同性の解析においては、癌の遺伝子変異解析にて元の臨床検体との相違の検討を行った。大腸癌検体において、KRAS、NRAS、BRAFの遺伝子変異について解析を行ったところ、KRASは85%,NRAS, BRAFは100%一致していた。培養中に遺伝子変異が起こる可能性、遺伝子変異細胞が培養により検出感度以上になる可能性などが考えられるため、今後、デジタルPCRなどで希少変異の解析を行っていく予定である。また、「癌微小環境」の評価として行った、細胞免疫染色(α-SMA、サイトケラチン、CD140等)やFACSによる表面マーカー解析において、癌関連線維芽細胞は我々の樹立した初代培養細胞においては数%未満であった。セルソーターにて分離した細胞集団を作成したところ、それらの細胞だけでは増殖が困難である事がわかった。 個々の患者モデルとしての検討に関して、培養細胞の薬剤感受性試験結果と臨床での抗がん剤の治療効果判定について解析を行うため、in vitroの薬剤感受性試験で用いることのできる、臨床での抗がん剤パネルと、パネルを用いた感受性試験のプラットフォームを作成した、現在8症例まで蓄積している。in vitroの結果と臨床での治療効果の相関性について今後検討を行っていく予定である。
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