研究課題
現在、多くの基礎研究で標準的に用いられているのは固定された臨床の組織検体もしくは細胞株と呼ばれる増殖能を獲得した癌細胞であり、実際の個体内での癌のミニチュアモデルとなるような、多様性をもつ生きた癌組織を用いることは難しい。癌のミニチュアモデルとなりえるものが、臨床の癌に近い形質を保っている可能性のある初代培養細胞である。我々は、より簡便で再現性のある手技で、初代培養を確立することを目的とし研究をおこない、大腸癌においては樹立効率が8割程度と非常に成績が良い手法を確立した。また、この方法を他癌腫へも応用拡大させることに成功した。我々の樹立した初代培養細胞(isolated tumor-derived Cancer Cells, iCC)は基本的な培養方法を2次元培養としており(two-dimensional (2D) cultured organoid, 2DO)、非常に汎用性がある手法で、薬剤感受性試験を含む様々な研究手法において簡便に用いることの可能となった。2DOの解析において、2DOは遺伝子発現や病理組織像においても臨床の腫瘍をよく反映していた。血清を含む従来の細胞株の培養環境では細胞が比較的単一な集団になること比較し、basic fibroblast growth factor や transforming growth factor-bを含む我々のiCC培養液においては、幹細胞を維持培養され、多様なキャラクターを含む細胞集団の維持が可能になっていることが要因であることが考えられた。また、2DOを利用した薬剤感受性予測は、臨床における抗がん剤の治療効果を反映していた。より臨床の腫瘍に近い細胞挙動の解析が可能になる初代培養細胞(2DO)を確立し、その解析をおこなった、また生体における癌のミニチュアモデルとしての応用の可能性を示した。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: in press ページ: -
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Stem Cells International
-
Surgery Today
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