研究実績の概要 |
肝細胞癌の5年生存率は約40%とその治療成績は不良である. 肝細胞癌が予後不良である原因の一つとして, 根治的切除しえたとしても術後の肝内転移が高率で起こることが挙げられる. In vivo selectionという手法を用いて肝細胞癌肝内転移メカニズムの解明を行うことを目的とした. ヒト肝細胞癌細胞株HuH-7-Lucを免疫不全マウスであるSCID/Beigeマウスの脾臓内に注入することで, 経門脈的に肝内に病巣を形成した. 得られた肝腫瘍から癌細胞を分離培養し, 脾臓内に再投与した. この操作を4サイクル繰り返して行うことにより, 高転移能株を樹立した. 高肝内転移能株は親株と比較して, 細胞増殖能の上昇およびアポトーシス能 (13.4% vs 3.4%), アノイキス能の抑制を認めた. 脾臓摘出モデルにより腫瘍形成率を並列で比較したところ, 親株: 0% (0/9匹)に対して, 高転移能株: 67% (6/9匹)と腫瘍形成率の有意な上昇を認めた. 親株と高肝内転移能株におけるmRNAおよびmicroRNAの発現変化を統合プロファイリングの手法で比較検討し, 転移に関わる遺伝子群の同定・解析を行った. 高肝内転移株で有意に発現上昇していたmiRNAを3個, 発現低下していたmiRNAを32個ターゲット候補として抽出し, これらに公開データベースの情報を付加し, さらに実験系に関連する機能遺伝子の絞込みを行うことで遺伝子統合プロファイリングを行った. 統合プロファイリングの結果, miRNAの変動と逆相関関係にあるmRNAの組み合わせとして, miR23a-3pおよびVCAN, CXCL12を有効なバイオマーカーとして同定した.
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