研究実績の概要 |
術前未治療で根治術を施行した食道扁平上皮癌80例の切除標本(FFPE)を用い、Laser microdissectionにより癌部DNAを抽出し、リアルタイムPCR法でCO1遺伝子と核DNAの比よりmtDNAコピー数を測定。20例について非癌部食道粘膜のmtDNAコピー数と比較すると、癌部では56.0% (37.4-234.5%)と有意に減少していた。癌部80例での検討では、mtDNAコピー数低値群で有意に病理学的深達度及び病理学的病期が進行していた。また、低値群で有意に5年生存率が不良であり(31.5% vs 68.4%, p<0.01)、mtDNAコピー数は独立予後因子であった。 ミトコンドリア転写因子A(TFAM)をshRNAでknockdown(KD)し、mtDNAコピー数減少細胞株を樹立した(TE8:約40%、TE11:約60%)。遺伝子発現についてRT-PCR法およびWBを施行すると、TFAM-KD細胞ではE-cadherinの低下、N-cadherin / vimentin / zeb-1の上昇が見られた。さらにMatrigel-invasion assay、Scratch-wound healing assayを行ったところ、TFAM-KD細胞は浸潤能、遊走能が有意に亢進していた。一方、癌幹細胞マーカーであるCD44について、mRNA及び蛋白発現をRT-PCRとフローサイトメトリーで測定した結果、TFAM-KD細胞でCD44のmRNA及び蛋白発現の上昇を認めた。Tumor sphere formation assayを行ったところ、TFAM-KD細胞で腫瘍形成能が有意に亢進していた。以上の結果よりmtDNAコピー数減少細胞は、癌の悪性度と関連する上皮間葉転換、癌幹細胞化をきたし、さらに抗がん剤に対する治療抵抗性があることを確認した。
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