当院で2000年から2011年までの間に術前補助化学療法を併用して根治切除術を施行した進行食道扁平上皮癌症例159例を対象に切除標本をホルマリン固定、全割し、腫瘍部標本に対して、腫瘍低酸素環境で活性化される低酸素マーカー(HIF-1α/CA9/GLUT-1)及びマイトファジー関連マーカーであるPink-1の抗体による免疫組織染色(HRP酵素抗体法)を行い、染色をスコアリング評価した。染色結果について低酸素マーカー及びPink-1の発現状況と治療効果、予後(overall survival、progressionfree survival)をはじめとする臨床病理学的情報との相関を解析した。上記の食道扁平上皮癌159例を対象に腫瘍部標本の連続切片を作成し、各症例についてランダムに5視野を選定して、それぞれの視野で低酸素マーカー及びPink-1蛋白の染色を判定した。全視野の染色判定データを集積し、HIF-1αとPink-1の染色局在の相関を解析するとともに、局在での染色一致が高頻度でみられる症例と治療効果(臨床効果、組織学的効果)、予後をはじめとする臨床病理学的情報との相関を検討した。局所の染色評価では、HIF-1α陽性部のPink-1陽性率は83.3%と高値であり、局所的に低酸素環境がマイトファジーを誘導している可能性が示唆された。一方で、他の低酸素マーカーであるGLUT-1では、症例全体としてGLUT-1発現と治療効果、ly、vに関連が見られた。しかしながら、Pink-1発現との相関は見られず、局所の評価でも発現の相関は見られなかった。同じく低酸素マーカーであるCA9については、臨床情報との関連はなく、Pink-1発現との相関も見られなかった。WBでは低酸素環境におけるPink-1及びオートファジーマーカーであるLC3の誘導が示唆された。
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