1.hTERT発現制御遺伝子の新規同定と機能解析 肝細胞癌細胞株において、レンチウイルスshRNAライブラリを用いたスクリーニングにより、hTERTプロモータ活性を促進する遺伝子2つ(C15orf55およびC7orf43;計画調書における遺伝子EおよびFに該当)を同定した。これらの遺伝子の、hTERTプロモータ上での機能を調べるために、hTERTプロモータの応答領域を同定しそこより、関連する転写因子の同定を試みた。すると、C15orf55はSP1-binding site(すなわちGC motif)に、C7orf43はETSファミリー(具体的にはGABPAとEGR)の結合領域に応答することが明らかとなった。これより上流を推測するに、C15orf55はSP1のGC motifへのリクルートを活性化することが示唆され、また、C7orf43はHippoシグナル経路のエフェクター因子であるYAP1を活性化することが示唆された。実際に、C15orf55を過剰発現させるとSP1のhTERTプロモータ上への結合が増加した。C7orf43の過剰発現でYAP1の核内移行が促進していた。またsiRNAによりSP1をノックダウンするとC15orf55により、あるいは、YAP1をノックダウンするとC7orf43により引き起こされるhTERTプロモータ活性化がキャンセルされた。すなわち、C15orf55はSP1を介してhTERT転写を促進し、C7orf43はYAP1を介してhTERT転写を促進していることが明らかとなった。 2.新規因子C15orf55とC7orf43の臨床的意義と肝細胞癌スクリーニング系の確立 研究者の所属施設で取得されたヒト肝細胞癌組織よ遺伝子発現を定量化することで新規因子が予後と関連していることを示した。これらの手法を用いて肝細胞癌の予後不良患者のスクリーニング系を確立した。
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