研究課題
本研究では、マイクロRNAの発現量とがん患者に対する免疫療法の効果との関係を探索するため、がん局所微小環境に着目し、がん細胞並びに間質におけるマイクロRNAの発現を別個に解析し、がんペプチド療法の有効症例を予測するバイオマーカーを同定するとともに、がん治療の新規標的となるマイクロRNAの同定を検討することを目的とした。はじめに、進行・再発性大腸がんに対して化学療法とHLA拘束性ペプチドワクチンの併用療法を施行した26症例の治療前凍結癌組織中のマイクロRNAの発現量をマイクロアレイ解析により測定したところ、本療法の効果に関連が見られたマイクロRNA発現が複数個選定された。本研究では、症例数を68例に増やし、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からLaser capture microdissection法を用いて、がん細胞とがん間質部を別々に採取し、それぞれから抽出したtotal RNAからcDNAを合成し、マイクロアレイ解析により候補に挙がったマイクロRNAについて、定量的PCR法によりマイクロRNAの増幅・検出を行った。その結果、がん細胞および間質部のmiR-125b-1が低値の症例、ならびにmiR-378a低値の症例は、HLA-matched症例において、本療法後の予後が良好で有り、HLA-unmatched症例では差が見られなかったことより、これらのマイクロRNAは免疫療法の効果と関連する有用なバイオマーカーとなり得る可能性があると判断した。さらに、in situ hybridizationにより、組織切片中の局在について解析したところ、miR-125b-1は間質の線維芽細胞と単核細胞で強い発現を示すことが確認できた。免疫療法効果予測タンパク候補として、Siglec-7並びにSonic hedgehogの免疫染色を行ったが明確な予後との関連性は得られていない。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Oncol Rep.
巻: Sep;40(3) ページ: 1621-1631
10.3892/or.2018.6575.