研究実績の概要 |
(1)臨床検体を用いた検討:当科において2008~2012年に術前無治療で切除した胃癌 204例の切除標本と、2006~2016年に化学療法後に切除した胃癌29例の治療前生検標本を対象とした。CD44v9発現を免疫組織化学染色で評価し、臨床病理学的因子や予後、組織学的治療効果との関係を検討した。CD44v9高発現群57例(27.9%)は低発現群147例(72.1%)と比較し、有意にT3以深(p=0.0034)、リンパ管侵襲(p=0.0007)、静脈侵襲(p=0.0281)、リンパ節転移(p=0.0411)、遠隔転移(p=0.0077)を多く認め、予後不良であった(全生存率p=0.0013,無病生存率(p=0.0014)。治療前生検標本におけるCD44v9高発現群14例(48.3%)は低発現群15例(51.7%)と比較し、有意に組織学的治療効果が低かった(p=0.0253)。 (2)胃癌細胞株を用いた検討:CD44v9高発現胃癌細胞株であるMKN45・NUGC4を用いてCD44v9発現をknockdownし、5-FUに対する薬剤感受性や細胞内GSH・ROS levelの変化について検討した。CD44v9高発現胃癌細胞株(MKN45・NUGC4)においてCD44v9発現をknockdownすると、5-FUに対する薬剤感受性が上昇する傾向にあった。またCD44v9発現をknockdownすると、細胞内のGSH levelが有意に低下し(MKN45 p=0.0001,NUGC4 p=0.0252)、5-FU投与によるROS levelが有意に上昇した(MKN45 p=0.0002,NUGC4 p=0.0047)。 CD44v9発現は薬剤の組織学的治療効果と有意に相関しており、CD44v9は細胞内の活性酸素を制御することによって、5-FUの薬剤感受性に影響を与えている可能性がある。
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