昨年までに、肝移植症例の摘出した肝臓及び脾臓からマクロファージと線維芽細胞の単離、また担癌肝組織の癌部・非癌部からの線維芽細胞(cancer-associated fibroblast(CAF)とnormal fibroblast(NF))の単離を行ってきた。またCAFのエクソソームにも注目し、遠心法にてエクソソームを抽出し、肝癌細胞株と共培養してmigration assayしたところ、CAF由来エクソソームで有意に浸潤能が高いことを示した。 今回肝癌切除後の臨床データから、肝切除後に脾臓容量が大きいと再発が多く、脾摘症例では再発が少ないことを報告した。そこで脾臓由来のマクロファージと線維芽細胞、抗腫瘍免疫で特に重要なNK細胞に注目した。肝癌症例の脾臓から線維芽細胞と単球を分離し、さらにNK細胞とマクロファージを単離した。これらと肝癌細胞株を共培養したところ、マクロファージを除くと肝癌増殖能が抑制され、線維芽細胞を除くと増殖能が増加することがわかった。このことから脾臓由来マクロファージは抗腫瘍免疫に関わるが、線維芽細胞は腫瘍増殖に関与することが考えられた。 そこで前述のCAF及びNF由来エクソソーム内のmiRNAをマイクロアレイにかけたところmiRNA150-3pの発現がCAFで有意に低下しており、miRNA150-3pを強制発現、または強制発現させたCAFと共培養させた肝癌細胞株は有意に浸潤能が高くなった。miRNA150-3pの負の標的遺伝子をデータベースからCDH2と特定し、CDHをノックダウンした肝癌細胞株では有意に浸潤能が低下した。実際の肝癌切除症例のパラフィン包埋ブロックで免疫組織染色を行うと、CDH高発現群で無再発生存率、全生存率ともに有意に予後不良であった。
|