研究課題
大腸癌幹細胞株において、抗がん剤投与後に発現が低下したc-Mycを制御する上流の因子としてFBXW7に着目した。FBXW7はイマチニブを投与された白血病幹細胞において細胞をG0期に導入し抗癌剤耐性を獲得するメカニズムに寄与していると報告されている。抗癌剤投与後にc-Mycが低下した細胞において、FBXW7の発現は上昇していた。そこでFBXW7を抗癌剤投与後のPLR123細胞でsiRNAを用いてノックダウンしたところ、抗癌剤耐性が改善するという結果が得られた。一方で通常の大腸癌細胞株においては、抗癌剤投与後にFBXW7の上昇は見られなかった。続いて癌幹細胞株であるPLR123をマトリゲルにて処理することにより分化を誘導することに成功した。分化誘導したPLR123ではxenograftにおける腫瘍形成能が低下していた。分化誘導されたPLR123では抗癌剤投与後にFBXW7の上昇は見られず、また抗癌剤に対する耐性が低下していた。平成17年より保存されている600例以上の大腸癌切除検体及び100例以上の大腸癌肝転移巣切除検体を用いて候補分子の免疫染色、RT-qPCRによる発現解析を行い、蓄積された治療成績、予後データとの相関解析にて基礎的知見の臨床的意義を検証した。化学療法後の大腸癌検体において残存病変のFBXW7の発現は上昇していた。今回の研究で大腸癌幹細胞特異的なFBXW7調整メカニズムは抗癌剤耐性に強くかかわっていることが分かった。このメカニズムをターゲットとすることで大腸癌幹細胞の新たな治療戦略に寄与することができる可能性がある。
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