研究課題
食道癌は集学的治療が行われているにもかかわらず、高頻度に再発・遠隔転移を起こす予後不良な疾患である。食道癌の新しい治療法、診断法を開発するためには、詳細なメカニズムを理解することが重要である。我々の教室では現在までに、食道癌におけるmicroRNA(miRNA)の発現解析を報告してきた。しかしながら、いまだ解析の進んでいないmiRNAは多数ある。これらを踏まえ平成29年度には以下の研究を行った。1)食道癌臨床検体におけるmiRNA発現解析。我々の教室ですでに論文発表されている、食道癌臨床検体30例における73種類のmiRNA発現プロファイルから候補miRNA(miR-23a、miR-26a、miR-27b、miR-96、miR-128b、miR-129)を同定した。症例数を増やすため臨床検体のcDNAを90例作成し、候補miRNAの発現状況をRT-PCRで再度評価した。miR-96に関しては、発現上昇に伴い生存期間の有意な短縮を認めた。2)miRNAの発現抑制実験。食道癌細胞株TEシリーズ、KYSEシリーズのmiR-96の発現状況をRT-PCRで評価した。最も発現の多く見られたKYSE70にmiR-96のinhibitorを導入し発現抑制を、最も発現の少なかったTE-8にmiR-96のmimicを導入してして発現促進を行った。RT-PCRで発現抑制、発現促進がなされていることを確認した。miR-96の発現抑制、発現亢進が細胞増殖に与える影響をギムザ染色、WST-1により評価した。現在のところ細胞増殖には有意な差が見られていない。今後浸潤能や遊走能に関しても評価を行う予定である。
3: やや遅れている
cDNAの作成に予想以上に時間がかかり、定量実験、細胞株での実験に遅れが生じている。
miR-96の発現抑制、発現亢進が癌細胞の浸潤能、遊走能に与える影響をcell invasion assayや、癌細胞の細胞遊走assayなどで評価する。また、オンラインソフトにて同定されたmiR-96のターゲット遺伝子の機能解析も予定している。また、癌部で発現の低下していたmiRに関しても症例を増やして再検討する。
cDNA作成に時間がかかり、定量実験、細胞株での実験に遅れが生じ蛋白解析が行えなかったため。29年度、30年度分予算は30年度で使用できると考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Oncotarget
巻: 36 ページ: 60378-60389