研究実績の概要 |
【方法】手術施行した大腸癌を対象とし,(1)原発巣癌組織(n=29)および(2)血漿中遊離DNA(n=70)におけるCHFR遺伝子の相対的DNAメチル化レベル(Relative methylation value:RMV)を測定し,臨床病理学的因子との関連性について検討した.(1)原発巣癌組織におけるDNAメチル化レベルの測定には癌組織からDNAを抽出後にbisulfite処理を行い,定量的メチル化特異的PCR(qPCR)で測定した.得られたDNAメチル化レベルの結果とHistoculture drug response assay (HDRA) 法を用いて得られたpaclitaxelによる大腸癌腫瘍制御率との相関を検討した.(2)血漿中の遊離DNAメチル化レベルの測定には術前に採取した血漿2mlを用いた. 【結果】(1) 原発巣癌組織におけるCHFR-RMVの中央値は2.5%であった.CHFR-RMVとpaclitaxel大腸癌腫瘍制御率との間に有意な相関はみられなかった.(2) 血漿中遊離DNAメチル化レベルでは、静脈侵襲,リンパ節転移,肺転移を認める症例では認めない症例よりもCHFR-RMVが有意に高値であった(各々p=0.01, p=0.01, p=0.02).また,最終病期がStage IVの症例ではStage I, II, III症例よりもCHFR-RMVが高い傾向がみられた(p=0.08).一方,他の臨床病理学的因子では有意差は認められなかった.また,術前血清CEA値とCHFR-RMVの相関は認めなかった(R=0.06,p=0.66). 【結論】本検討により,血漿中遊離DNA におけるCHFR-RMVと血行性転移,特に肺転移との相関の可能性が示唆された.一方,原発巣癌組織におけるCHFR-RMV測定の意義に関しては,さらに症例を集積し,検討していく必要性がある.
|