研究実績の概要 |
本研究の目的は,大腸粘膜下層浸潤(SM)癌におけるDNAメチル化をゲノムワイドに解析し,所属リンパ節転移の有無を予測しうる遺伝子のDNAメチル化を探索することである.DNAメチル化は,癌の発生や進行に重要な役割を果たしている.本研究は,所属リンパ節転移の有無とDNAメチル化の状態との関連性を解析する.そして関連性が高いと考えられる候補遺伝子を個別に解析し,所属リンパ節転移の有無における予測能について評価を行う.DNAメチル化の評価により,所属リンパ節転移の有無が予測することが出来るようになれば,大腸SM癌内視鏡的切除後症例における追加腸切除が必要な症例の絞り込みが可能となり,同時に不要な追加腸切除を回避出来るため,患者の利益のみならず医療経済的にも有益で,非常に重要性の高い研究である. 大腸SM癌における内視鏡的診断や治療において本邦は世界をリードしており,その症例数は豊富であると考えられる.また,これまでに,大腸SM癌における所属リンパ節転移を予測するための臨床病理学的因子を用いた研究は数多く発表されている.しかし,現時点で大腸SM癌における所属リンパ節転移の有無のリスク評価を目的としたゲノムワイドDNAメチル化解析の報告はない.したがって,本研究により,大腸SM癌における所属リンパ節転移の予測精度を向上させうる新たな知見が得られる可能性が考えられ,不必要な追加腸切除術を回避することが出来るようになることが期待できる. 現在までに倫理審査委員会での承認を受け,対象症例の選別を行った.対象症例のFFPEサンプルから未染のスライドを切り出し中である. 今後は,全症例の切り出しが終了した後,スライドからDNAを抽出,ゲノムワイドなDNAメチル化を解析する予定である.
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