近年では便潜血反応検査および下部消化管内視鏡検査の普及や進歩により、腺腫や粘膜癌(M癌)および比較的早期の大腸SM癌が発見されるようになってきている。これらの病変に対しては、内視鏡的切除術が施行され、多くの症例で内視鏡切除のみで根治が可能である。しかし一方で、大腸SM癌においては、約10-20%の症例で所属リンパ節転移を認めると報告され、そのような症例では追加腸切除術による所属リンパ節の切除が必要となる。これまでには、大腸SM癌のSM浸潤距離や脈管侵襲、組織型など主に病理組織学的所見に基づいて所属リンパ節転移のリスク評価が行われ、所属リンパ節転移が疑われる症例では追加腸切除術が推奨されてきた。しかしながら、追加腸切除術が施行された症例の約80-90%では所属リンパ節転移は認められないため、そのような症例に対する追加腸切除術施行は過剰治療との批判も見受けられ、病理組織学的所見に基づいたリスク評価だけでは不十分であるのが現状である。そのため、近年では所属リンパ節転移のリスク評価の精度を高めるため、主に分子生物学的な手法を用いたGenetic biomarkerの同定が試みられている。しかしながら、確立されたリスク評価方法は少なく、臨床的応用が可能とは言えないのが現状である。 本研究では、近年、確立されてきた網羅的(ゲノムワイド)にDNAメチル化を測定するアッセイを用いて、大腸SM癌における所属リンパ節転移の予測精度を向上させうる新たなDNAメチル化マーカーの同定を目指している。 これまでに、大腸SM深部浸潤癌における所属リンパ節転移陽性症例と陰性症例を比較し(現時点までに各群12例ずつを解析済み),DNAメチル化状態が転移の有無と関連するlociを探索した。現在、共同研究施設からの症例を集積し、validation studyを行っている。
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