研究課題/領域番号 |
17K16598
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岡村 誉 自治医科大学, 医学部, 講師 (70438646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サルコペニア |
研究実績の概要 |
近年、サルコぺニア(加齢に伴う全身の筋肉量・筋力の低下)が生命予後に影響すると注目されている。しかし心臓血管外科領域においてサルコぺニアの有無は通常の術前リスク評価方法に含まれておらず、術後予後への影響も明らかではない。そこで今回我々は心臓・胸部大動脈手術患者における術前サルコペニアの予後に及ぼす影響を研究した。まずは心臓弁膜症手術患者におけるサルコペニアの影響を研究した。2009年から2013年までの期間に自治医大さいたま医療センターで心臓弁膜症に対して手術した患者1119名のうち、70歳以上の心臓弁膜症手術患者428名において術前CTにて腸腰筋面積を腸骨稜上端レべルで計測し、腸腰筋面積の少ない下25%の患者群をサルコぺニアと定義した。術前サルコぺニアの有無で分けた2群の予後をカプランマイヤー曲線でログランク検定にて比較したところ、サルコペニア群で有意に術後遠隔生存率と主要心臓合併症回避率が低かった。また多変量解析においてもサルコペニアが術後遠隔死亡と主要心臓合併症の有意なリスク因子であることを確認した。Inverse probability weighting法においても同様な結果を確認した。これら研究結果を論文にし、Journal of Thoracic Cardiovascular Surgeryに投稿した。修正・加筆を求められ、先日再投稿を行ったところである。同様の研究を、冠動脈バイパス術や胸部大動脈手術患者においても行うため現在これら患者の術前データ収集と腸腰筋面積測定を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2009年から2013年までの期間に自治医大さいたま医療センターで心臓弁膜症に対して手術した患者1119名のうち、70歳以上の心臓弁膜症手術患者428名において術前CTにて腸腰筋面積を腸骨稜上端レべルで計測し、腸腰筋面積の少ない下25%の患者群をサルコぺニアと定義した。術前サルコぺニアの有無で分けた2群の予後をカプランマイヤー曲線でログランク検定にて比較したところ、サルコペニア群で有意に術後遠隔生存率と主要心臓合併症回避率が低かった。また多変量解析においてもサルコペニアが術後遠隔死亡と主要心臓合併症の有意なリスク因子であることを確認した。Inverse probability weighting法においても同様な結果を確認した。これら研究結果を論文にし、Journal of Thoracic Cardiovascular Surgeryに投稿した。修正・加筆を求められ、先日再投稿を行ったところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在雑誌投稿中の心臓弁膜症患者におけるサルコペニアの影響についての論文が採択されるよう進めていく。また同時に、胸部大動脈疾患および冠動脈疾患患者においても同様にデータ収集を行い、解析・論文投稿していく予定である。 また、腸腰筋面積の影響のみならず術前にMRIを施行し、腸腰筋の変性・繊維化・脂肪変性の有無を評価することで術後予後や筋肉量との関連性を検討する。また加齢・サルコペニアのメカニズムに関与しているとされる種々の炎症性サイトカインを測定し、CTとMRIから測定された筋肉量や筋肉の質的異常との関連を調べ、術後予後への影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
弁膜症患者におけるサルコペニアの影響に関する研究は順調であるが、当初予定していたMRIを使用した腸腰筋の質的診断とサルコペニア関連バイオマーカーの有用性の研究に遅れが出ており、そのため次年度使用額が生じた。 今後、胸部大動脈疾患および冠動脈疾患患者においても弁膜症患者同様にデータ収集を行い、解析・論文投稿していく予定である。 また、腸腰筋面積の影響のみならず術前にMRIを施行し、腸腰筋の変性・繊維化・脂肪変性の有無を評価することで術後予後や筋肉量との関連性を検討する。また加齢・サルコペニアのメカニズムに関与しているとされる種々の炎症性サイトカインを測定し、CTとMRIから測定された筋肉量や筋肉の質的異常との関連を調べ、術後予後への影響を評価する。
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