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2017 年度 実施状況報告書

肺異型腺腫様過形成、腺癌の発癌メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K16607
研究機関大阪大学

研究代表者

木村 賢二  大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50795325)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード発癌 / 異型腺腫様過形成 / 肺癌
研究実績の概要

異型腺腫様過形成(AAH)は、肺胞II型上皮細胞あるいは細気管支線毛上皮細胞(クララ細胞)類似の細胞からなる腫瘍であり、肺末梢の限局性病変である。新しいIASLC/ATS/ERS 腺癌分類では、AAHは、adenocarcinoma in situ(AIS)とともに前浸潤病変として分類され、微小浸潤腺癌、浸潤癌へ進展していくと考えられている。AAHで特異的に発現し、癌化の過程に直接的に関わる遺伝子変異は明らかにされていない。AAH発生の機序を解明することは、肺腺癌発症の機序を明確化し、新たな肺癌治療を考案するだけではなく肺癌予防医学にも多大な貢献が期待できる。申請者は、肺腺癌の癌化に関わる遺伝子変異を明らかにし、新たな肺癌治療を考案することを目的として研究を開始した。申請者は現在まで報告されている肺腺癌に関連する遺伝子を、正常ヒト微小気管支上皮細胞(SAEC)へ導入することによって生じる現象を観察し、AAH発生の機序を明らかにすることとした。申請者は不死化したSAECへ肺癌の既知のドライバー遺伝子であるKrasG12VやdelEGFRおよび新規癌関連遺伝子(因子X)を安定発現させた細胞株を樹立した。その結果、発癌において重要な細胞増殖能の亢進や細胞の悪性化に関わるとされるN-cadherinの発現増加を認めた。これらの樹立した細胞で認めた現象は、既知の癌遺伝子に加えて因子XがAAHの病理組織学的定義である異型細胞の増殖を反映したものと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SAECへhTERT+CDK4+DN-p53導入した癌幹細胞様細胞(4T53)を作成た。まず、新規癌連遺伝子(因子X)をpMSCVを用いて、EGFR変異をもたない肺腺癌の細胞株であるA549へのトランスフェクションによる遺伝子導入を行い、Western-blotting法(WB) により因子Xの安定発現を認めることを確認した。次に同様の実験系で、EGFR変異(exon19del)、KRas変異(G12V)を4T53細胞へ導入した。その後、growth assayにおいて細胞の増殖能亢進を認めた。さらにWBやqPCRにより、細胞の悪性化と関与が深いとされている上皮間葉移行(EMT)のマーカーであるE-cadherinの発現低下、N-cadherin・Vimentinの発現上昇を認めた。これらの実験結果から、導入した遺伝子によってin vitroでの細胞の悪性化を確認した。つぎに、生体内での腫瘍形成能評価を行った。既述した細胞群をそれぞれ用いて、athymic nufe miceの左肺実質内へ接種した。現在、その細胞の生着と組織学的解析を行っている。以上の研究から、因子Xと肺癌の発癌過程との関連を明らかにできると考えている。

今後の研究の推進方策

因子X導入細胞株において細胞と腺癌細胞株(A549, H441, H358)と比較する。特に、癌の転移能や浸潤能を獲得するとされるEMTのマーカーを中心に、増殖因子などの遺伝子発現や産生量 (RT-PCR, ELISA) を測定し、さらにWestern blotting法によって、発現量に変化を認める蛋白を同定する。あわせて増殖能 (WST-1アッセイ系) ・遊走能 (スクラッチアッセイ系) を解析する。これらの方法により、細胞に導入された遺伝子が細胞周囲微小環境に与える機能変化や蛋白発現を解析する。さらに当院での豊富な臨床検体を用いて、AAHを有する症例とそうでない症例の肺癌切除標本を免疫染色することで、既述した実験によって同定した蛋白や因子Xの発現を解析し、AAHと正常組織や浸潤癌病変の違いを解析する。今回の研究期間を含めて10年間分のパラフィン固定標本においても同様の免疫染色を行い、再発率や5年生存率とあわせて解析することで予後予測因子の有無について解析する。

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公開日: 2018-12-17  

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