研究実績の概要 |
胸膜浸潤の診断は,術後の病理診断によって確定するが,術前または術中に診断できれば術式選択を含む治療方針決定のための有力な情報となる.従来の白色光における術中胸膜浸潤診断の精度については,感度60%,特異度57.4%,正診率57%であったが,我々は術中胸膜浸潤診断に自家蛍光内視鏡を用いることで,感度80.6%,特異度70.2%,正診率75%と診断精度が向上することを示した.共焦点レーザー内視鏡(Confocal Laser Endoscopy:CLE)は,生体内で病理像と同等レベルの観察ができるシステムである.胸膜浸潤診断にCLEを用いることで,我々がこれまで行ってきた自家蛍光内視鏡による胸膜浸潤診断の精度向上が期待できるのではないかと考え本研究を立案した.胸腔内癒着がなく,腫瘍部位の胸膜に変化を認める肺癌手術症例37例(男/女:20/17,平均年齢72.0歳,組織型 腺癌/扁平上皮癌/その他:26/10/1,腫瘍平均径22.8mm)を対象とし,切除を用いてCLE観察を行い胸膜浸潤診断を行った.正常胸膜をCLEで観察すると,白色の微細な網目状構造が観察され,これは病理学的に臓側胸膜の外弾性層であることを組織学的に確認した.胸膜浸潤部周囲では,この白色網目状構造が粗造となり,浸潤部では構造が消失する.これらの知見と初期症例の経験から,胸膜変化を認める部位のCLE観察で,半分以上の面積において白色網目状構造の完全な消失を認める症例を,胸膜浸潤有り(CLE-PL1)と定義した.胸膜浸潤に関してはCLE-PL1/CLE-PL0:12/25,pl1/pl0:9/28であり感度100%,特異度89.3%,正診率75%であり,CLE観察による胸膜浸潤評価は感度,特異度とも良好で,診断率向上に寄与する手段と考えられる.
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