研究課題
KRAS遺伝子は肺癌の実地臨床では検索が行われることのない遺伝子変異であるため、まず肺腺癌において最も多い遺伝子変異であり広く検索されているEGFR遺伝子変異の有無について症例を層別化し、FAM83B発現を解析した。EGFR遺伝子変異陰性例において有意にFAM83BはメッセンジャーRNAレベルで高発現であることをcDNAマイクロアレイの結果から確認した。また、ヒト肺腺癌由来細胞株を用いた検証を行い、FAM83B高発現株、低発現株双方においてFAM83B発現をsiRNAを用いてノックダウンしたところ増殖が有意に抑制される結果を得た。FAM83B発現がEGFR遺伝子変異陰性肺癌における発癌や腫瘍の細胞増殖へ関与している可能性があることが考えられた。文献的には正常細胞でもFAM83Bは低レベルでの発現があり、また、低発現細胞株でもノックダウンでの増殖抑制が確認されることから、FAM83Bは正常細胞の恒常性維持や増殖に関与している可能性があると考察された。これらの結果は第117回日本外科学会定期学術集会(2017年4月27-29日、横浜)、第53回米国癌治療学会議(2017年6月2-6日、シカゴ)で報告し、Oncology Letters (2018 Feb;15(2):1549-1558. doi: 10.3892/ol.2017.7517. Epub 2017 Dec 5) に論文投稿し報告している。
2: おおむね順調に進展している
EGFR遺伝子変異の有無で層別化し発現を解析したところEGFR遺伝子変異陰性例において有意に高発現であり、またヒト肺腺癌由来細胞株においてFAM83B発現をsiRNAを用いてノックダウンしたところ増殖が有意に抑制される結果を得ており、FAM83BがEGFR遺伝子変異陰性肺癌における発癌に関与している可能性があると考察された。KRAS遺伝子変異を含む他の遺伝子変異についての解析は未施行である。
EGFR遺伝子のほか、既知の発癌遺伝子変異であるKRAS遺伝子変異、ALK融合遺伝子の解析を進め、同時に既知ドライバー遺伝子変異症例の抽出を進める。また、副次的にKRAS遺伝子変異肺癌やドライバー遺伝子変異陰性肺腺癌において治療の効果が期待される免疫チェックポイント阻害薬療法のバイオマーカーについても並行して進める予定である。
遺伝子発現解析に用いる予定である。検査、実験の進捗状況により支出額の差異が生じた。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Oncology Letters
巻: 15 ページ: 1549~1558
10.3892/ol.2017.7517