【目的】特発性肺線維症(IPF)は不可逆的かつ治療困難な疾患であり、その治療法は未だ確立していない。IPFにおいてマクロファージ(MΦ)は、肺線維芽細胞の活性化に大きく影響する。炎症時にこのMΦは活性化し、炎症性のM1型と抗炎症性のM2型に分極することが知られている。IPFの肺組織ではM2型が優位である点に着目し、既存の抗線維薬Pirfenidone(PFD)や申請者らの施設で創出したS-Allyl glutathione(SAG)がMΦのM2型への分極制御を介して肺線維芽細胞の活性化を抑制するかを検討した。【方法】ラット肺胞MΦ細胞株に種々の濃度のPFD・SAGを添加培養し、M1型への分極を惹起するLPS + IFNγまたはM2型への分極を惹起するIL-4 + IL-13を同時に添加し、24時間後の培養上清中のTGF-β濃度、各種MΦの分極マーカーを解析した。また、ラット肺線維芽細胞株(RLF)に前述のMΦ上清を添加培養し、RLFの増殖およびコラーゲン合成関連蛋白・mRNAの発現を解析した。【結果】MΦはLPS + IFN-γによりM1型に、IL-4 +IL-13によりM2型に分極し、M2型MΦの培養上清中ではTGF-β産生が著明に増加した。PFD・SAGは、M1型への分極には影響しなかったが、臨床使用時の血中濃度でM2型への分極を有意に抑制した。IL-4 +IL-13を添加したMΦの上清をRLFに添加すると増殖能は上昇し、コラーゲンタンパクおよびCol1A1 mRNAの発現は増加したが、PFDはこれらを有意に抑制した。【結論】SAG・PFDは、MΦのM2型への分極を抑制した。さらにPFDとSAG併用による抗線維化抑制増強効果についても検討を加えていく予定である。
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