研究実績の概要 |
前年度に行った実験の結果、浮遊環境下で発育の遅い細胞(LC-2/adやH2009など)はマウスの転移モデルにおいても転移をほとんど形成しない傾向にあることがわかっていた。これらに引き続き、今年度はこれまでマウスへの移植を行っていない細胞株についても転移実験を行った(H1781, H1975,HCC827, PC3)。H1781, H1975はin vitroでの増殖能は強く、in vivoにおいても転移を多く認めた。一方、HCC827は増殖能が弱い細胞であるが、in vivoにおいてもほとんど転移を認めなかった。PC3に関してはin vitroでは増殖能が弱いが、in vivoでは多臓器にmultipleな転移を認め、唯一in vivoとin vitroの結果が乖離する結果となった。 また高転移株であるA549およびH441を低濃度(通常の1/10の濃度)でマウスの左心室に移植し転移傾向を観察したが、低濃度の細胞であってもこれらの高転移株ではマウスに多発転移を形成した。
これまで得られた転移モデルを用いて転移誘発実験を行った。具体的にはこれらの低転移株を移植したマウスにLPSを投与し炎症を惹起させることで転移が誘発されるか否かを検証した。LC-2/ad, H2009, A549, H441をそれぞれn=4ずつ検証したが、LPS投与群では炎症刺激によるマウスの衰弱が著名であり実験結果が得られなかった。再度LPSを減量して実験を行ったが、同様の結果であった。我々が用いているNOD/SCIDマウスではLPSにより惹起される炎症性サイトカインが通常の免疫機能を有するマウスに比べ多く発生することが文献上知られており、このことが我々のモデルにおいてLPSが致死的となる原因と考えられた。
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