研究実績の概要 |
申請者が開発した新しい言語機能マッピング法”Passive language mapping” (Tamura Y, J Neurosurg. 2016)に、さらに腫瘍の蛍光分光解析システムを併用することで、患者協力のいらない、かつ脳機能を温存しながらも境界不明瞭な脳腫瘍を最大限摘出することができ、結果的に生命予後の改善につながると考えられる。 腫瘍細胞は正常組織に浸潤していくため肉眼的には腫瘍と判別できない。5アミノレブリン酸(5ALA)を術前に経口投与すると、その代謝産物(プロトポルフィリンⅨ; PpⅨ)が腫瘍細胞に蓄積し、励起光により630nmの蛍光を呈することで同定できるとされている。また、蛍光強度と腫瘍細胞密度、細胞増殖能との相関関係もいわれている。しかしながら、PpⅨが腫瘍特異的に蓄積するのか、またその蓄積のメカニズムについては代謝酵素活性の低下など様々な報告がされているが、いまだ明らかにされていない。 本研究では、この蛍光強度を術中顕微鏡に搭載した分光器を介してリアルタイムに定量し、かつ光強度、距離、倍率の自動補正により術中に蛍光強度を定量できるシステム”Spectrum Insight” (特許申請中)を開発し、結果として客観的に蛍光強度の評価を可能とした。さらに組織内の物質分析、特にPpⅨの定量を行うことで、腫瘍蛍光強度とPpⅨ蓄積量、病理組織学的悪性度との関連性を示すことができた。今後の腫瘍へのPpⅨ蓄積メカニズムの解明に大きな前進を果たせたと考えられた。
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