本研究は、てんかん外科の術前精査であるてんかんモニタリング入院精査において、心理社会的評価や心理社会的介入支援の有用性について解明を図った。外科適応の早期決定や術後社会的転帰への影響を実証することを最終目標としていた。2017-2019年度末までに、延418名のてんかん患者の臨床情報、画像データ、認知機能、精神症状、QOLを含む心理社会的データを収集・解析した。2019年度の研究結果は、国内・国際学会において合計10件発表した。また、関連の論文特集号の企画や刊行も合計6件担った。現在、本研究に関する複数の論文作成を行なっている。詳細は以下に記す。 2019年度は、前年度に学会発表したてんかん患者における「障害受容」尺度の妥当性の研究と、てんかん患者における障害受容のquality of life (QOL)への影響を検証した研究の論文作成を行なった。また、社会への本研究に関する情報発信として、日本職業リハビリテーション学会誌に特集号「てんかんと就労」を企画・投稿した。その中で、筆者は共同研究者らと共に、(1)医療と職業リハビリテーションの連携の重要性、(2)てんかん患者の就労関連因子の系統的レビュー、(3)てんかんと就労における多面的問題について執筆した。 総じて本研究では、てんかん患者の心理社会的ニーズへの専門的介入の必要性が明らかになった。また、患者の抑うつやセルフスティグマなどの心理社会的問題が薬物治療や外科手術の有用性を阻んでいたことも有益な知見であった。包括的てんかんモニタリング精査において心理社会的評価を継続していくことは、患者や家族の潜在的なニーズを明らかにし、心理的介入や社会的支援につなげるためのゲートキーパーになりうる。今後は、本研究に関する知見を論文投稿し、社会発信を継続する予定である。
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