研究課題/領域番号 |
17K16624
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
飯島 圭哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医員 (10751878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | thalamo-reticular / GABA / VGAT-venus / epilepsy |
研究実績の概要 |
グリオーマに代表される脳腫瘍に伴って生じる「てんかん(=症候性てんかん)」の発生機序の解明および新規治療法の開発を目的として、特に抑制性GABA神経の細胞動態に着目した実験計画を立てた。具体的には抑制性ニューロン特異的に黄色蛍光を発するように遺伝子改変したラット(VGAT-VENUS transgenic rat)を用いて脳腫瘍モデルを作成し、脳腫瘍周囲のGABA神経の細胞動態を解析する計画を立てた。特に先行論文で着目している「視床」に腫瘍を発生させた時に生じる視床内の抑制性神経の変化を観察することを目標とした。まず本年度はtransgenic ratを用いずに、野生型ratを用いて定位的にratの脳内に培養したC6グリオーマ細胞を移植し、生着させる実験系の確立を図った。また、視床内のどの位置に腫瘍病変を作成すべきかについての検討を深めた。研究代表者の所属が年度途中で群馬大学からてんかん患者のデータが豊富に揃う国立精神・神経医療研究センターに変更になったことから、研究を臨床面からも検討を深めることができた。その結果、てんかんという脳内の異常な神経活動は、視床の中の唯一の抑制性神経細胞集団である「thalamo-reticular nucleus」が何らかの障害によって「thalamo-cortical circuit」のnegative feedback機構が破綻することで局所の脳波異常が脳全体に瞬時に広がるという現象が、臨床的にも問題となる症例が多いことがわかった。このような臨床的な裏付けから、本研究における視床内の観察対象は「thalamo-reticular nucleus」が良いと結論した。実際にVGAT-venus ratの視床を観察した。この結果、視床内では唯一「thalamo-reticular nucleus」が発光することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属が年度途中で群馬大学から国立精神・神経医療研究センターに変更になったことから、VGAT-venus transgenic ratを用いた実験の開始は当初の予定よりも遅れたが、群馬大学の大学院生の補助を得ることで現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
VGAT-venus transgenic ratへのグリオーマ細胞移植実験を進めていく。また、グリオーマ細胞へのtdTomatoによる赤色標識を行い、腫瘍の可視化を進める。腫瘍の移植部位は観察対象となるthalamo-reticular nucleusの内側にあるVPL(後外側腹側核)を腫瘍移植のターゲット部位としてthalamo-reticular nucleusga腫瘍浸潤に対してより脆弱なのかどうかを観察していく。さらに、c-Fosを蛍光免疫染色することで、機能不全に陥ったGABA神経とc-Fos陽性細胞(興奮状態にある細胞)との位置関係について解析し、作業仮説を検証する。 これと並行して、脳腫瘍細胞自体がGABA・グリシン・グルタミン酸を始めとする各種の神経伝達物質を産生・放出しているか否かを解析し、考察を深めていく。実験に用いるC6グリオーマ細胞に加えて、今後倫理審査を通して実際の臨床検体を用いてヒトの腫瘍細胞やその周囲の神経組織において各種の神経伝達物質がどの程度含まれているかを液体クロマトグラフィを用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属変更に伴い、予定していた計画から少し遅れて研究が進行しているため、次年度使用額が発生した。次年度には研究計画が追いつく予定であり、次年度分として請求する。
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