研究課題
腫瘍局所における抗腫瘍効果発揮メカニズムの解明のため、千葉大学医学部附属病院脳神経外科を受診し膠芽腫の診断が得られた患者に同意を得て、末梢血および手術時に摘出された腫瘍組織について、各種免疫細胞の機能解析を行った。その結果、NKT細胞に対する特異的な抗原提示分子であるCD1dを発現する膠芽腫が一定の割合で存在することを見出した。さらに、4種の膠芽腫細胞株のCD1d発現を確認したところ、U251とT98GはCD1d陽性細胞株であり、U87とU138はCD1d陰性細胞株であった。膠芽腫に対するNKT細胞を用いた免疫療法の有効性検討のため、CD1d陽性細胞株U251およびCD1d陰性細胞株U87を用いて、細胞傷害活性の評価を行った。CD1d陽性細胞株U251では、NKT細胞の代表的な糖脂質抗原であるα-GalCer添加により、NKT細胞の細胞傷害活性の増強が認められた。一方、CD1d陰性細胞株U87では、α-GalCer提示の有無によるNKT細胞の細胞傷害活性の変化は認められなかった。次に重度複合免疫不全マウスであるNOD/Shi-scid IL-2RγKOマウス(NOGマウス)にCD1d陽性細胞株U251を頭蓋内に移植してヒト膠芽腫モデルを作成した。このヒト膠芽腫モデルに、NKT細胞とα-GalCerを同時投与したところ、腫瘍増大の抑制と、生存期間の延長を認めた。一方、NOGマウスにCD1d陰性細胞株U87を頭蓋内に移植して作成したヒト膠芽腫モデルに、NKT細胞を投与した場合には、腫瘍増大は抑制されず、生存期間にも変化を認めなかった。これらの結果から、膠芽腫におけるCD1d発現は、膠芽腫患者に対するNKT細胞を用いた癌免疫療法の新規標的となる可能性が示唆された。
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