研究課題/領域番号 |
17K16626
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
足立 明彦 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (60758407)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線誘発腫瘍 / 重粒子線 / がん原遺伝子 / 骨肉腫 / 海綿状血管腫 / tumorigenesis / 染色体構造異常 / 次世代シークエンス |
研究実績の概要 |
重粒子線治療は、本邦が放射線医学総合研究所を中心に、世界に先駆け実運用に成功した技術であり、2015年までに世界で約1万9千名の患者が粒子線治療を受け、うち約1万6千名が国内での加療であるが、これまでその副作用として二次性腫瘍の臨床報告は無かった。本研究では粒子線治療後に出現する病変として、放射線壊死や血管障害の他に、誘発腫瘍発生にも留意する必要があることを改めて示した(World Congress on Advances in Oncology, 2015&2016)。 本研究の目的は、重粒子線治療後に誘発された二次性腫瘍の初の臨床2症例(頭蓋顔面骨骨肉腫および頭蓋内海綿状血管腫)の検体を用い、①ヒトにおける重粒子線による遺伝子変異の様式②骨肉腫を発生させる新規遺伝子③海綿状血管腫の新規遺伝子、を明らかにすることである。 本研究では、重粒子線治療の副作用としての発癌および二重鎖切断に基づく染色体構造異常という稀有(過去、粒子線治療を受けた16万人中2人)であるが決定的、 といえる事象を捉えることに成功しており、結果、新たな発癌に関わる因子同定に至ることができる可能性を考えている。 ①に関しては二重鎖切断による転座や欠失が、複数箇所に臨床例においても生じていることをmulticolor FISHおよびG band染色にて証明した。 ②③に関しては上記染色体分析に加え、腫瘍CGH+SNPアレイにて有力な候補領域を絞り込んだ。来年度以降でサンガー法および次世代シークエンスにて配列決定を行い、融合遺伝子の存在を明らかにしてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重粒子線照射後の二次性腫瘍発生に関しては、過去にはマウスを用いた報告があるのみ(Ando, J Radiat Res 2005)であったが、基礎研究で示されているような二重鎖切断による転座や欠失(Ritter, Mutat Res 2010)が臨床症例においても生じていることを本研究ではG band染色およびmulticolor FISHにて証明した。 当初は続けて昨年度までに、網羅的に複数の変異部位を明らかにするため次世代シークエンシングにより全ゲノムの比較変異解析を行う予定であったが、2020年度は世界的にシークエンス関連の医療資源が新型コロナウイルス感染症の臨床および研究に重点配分されていたため、充分に使用することができず、2021年度にすべての実験を纏めて行うこととしたため、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究期間は4年としていたが、新型コロナ禍の影響もあり計画が遅れているため1年延長し5年とした。まずは①骨肉腫②海綿状血管腫の各症例の手術検体(凍結検体および培養細胞)を用いて解析を進める。具体的には、この4年の間に、培養細胞よりG band染色およびmulticolour FISHを行い、染色体構造異常の有無を確認した。次年度以降には、異常接合部の塩基配列を求めTumorigenesisに関与していると考えられる変異部位を同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの実験(Multicolor FISH、G-band染色、腫瘍CGH+SNPアレイ)は、他民間研究資金にて行えた部分もあり、また実験が新型コロナウイルス感染症に関連して実験が全体に遅れていたため、科研費の使用に関しては2021年度にまわすことと致しました。
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