研究課題
【p.R4810K多型のgenotypingと、臨床像との関連解析】遺伝子解析の同意が得られた日本人もやもや病患者114例に対して、p.R4810K多型のgenotypingを行い、遺伝子型と臨床像との関連を解析した。1.小児例72例においては、p.R4810K遺伝子型は、野生型GG型は13例(18.1%)、ヘテロ接合型AG型は53例(73.6%)、ホモ接合型AA型は6例(8.3%)であった。このうち、4歳未満の梗塞発症で知能発達障害を残す劇症型は72例中6例(8.3%)で、GG型では13例中4例(30.8%)、AG型では53例中2例(3.8%)、AA型では6例中0例(0%)であった。統計学的にも、劇症型もやもや病でGG型が多いことが示された。2.成人例42例においては、p.R4810K遺伝子型は、GG型は7例(16.7%)、AG型は35例(83.3%)、AA型は0例(0%)であった。類もやもや病と片側もやもや病を除く真性もやもや病27例は全例AG型であった。これは、小児例ではGG型真性もやもや病も11例と多く存在し、p.R4810K多型以外の発病要因が考えられるのに対し、成人例ではp.R4810K6多型の影響が大きい可能性が考えられた。また他には、GG型は重症例が多いため成人に達する前に発症している一方で、AG型には成人期まで発症しない軽症例が多く含まれている可能性も考えられた。以上のように、成人例では小児例とは異なる遺伝学的傾向があることが明らかとなり、多様な遺伝学的要因がもやもや病の発病に関与している可能性が示唆された。また、p.R4810K多型以外の要因が劇症型もやもや病の発病に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
日本人もやもや病患者114例(小児72例、成人42例)に対してgenotypingを行えた。このうち、劇症型の臨床経過をたどる小児予後不良例は6例であった。劇症型もやもや病のp.R4810K多型遺伝子型はGG型が多く、p.R4810K多型以外の要因が劇症型もやもや病の発病に関与している可能性が示唆される結果も、予想通りのものであった。
【劇症型もやもや病特有の遺伝子型の探索】先行研究により、R4810K以外にもやもや病発病と関連する可能性が示された新規候補変異は5つ(R3020L, T3316I, R4062Q, R4927Q, E4750K)、候補遺伝子変異は1つ(CCER2遺伝子)になる。これら変異に関して、全もやもや病患者を対象にターゲットリシーケンスを行う。得られた遺伝子情報を劇症型患者6例と他のもやもや病患者とで比較して、劇症型患者に特有の変異パターンを探索する。
解析に用いる物品を他の研究と共有することで、購入費用を節約できたため。
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