遺伝子解析の同意が得られた日本人もやもや病患者114例に対して、遺伝子型と臨床像との関連を解析した。 1.小児例72例においては、p.R4810K遺伝子型は、野生型GG型は13例、ヘテロ接合型AG型は53例、ホモ接合型AA型は6例であった。このうち、4歳未満の梗塞発症で知能発達障害を残す劇症型は6例で、GG型は4例、AG型は2例、AA型は0例であった。統計学的にも、劇症型もやもや病でGG型が多いことが示された。 2.成人例42例においては、p.R4810K遺伝子型は、GG型は7例、AG型は35例、AA型は0例であった。類もやもや病と片側もやもや病を除く真性もやもや病27例は全例AG型であった。これは、小児例ではGG型真性もやもや病も11例と多く存在し、p.R4810K多型以外の発病要因が考えられるのに対し、成人例ではp.R4810K多型の影響が大きい可能性が考えられた。また他には、GG型は重症例が多いため成人に達する前に発症している一方で、AG型には成人期まで発症しない軽症例が多く含まれている可能性も考えられた。 3.もやもや病発病に関与する可能性のあるRNF213遺伝子内の他の候補変異および候補遺伝子CCER2に関しても、ターゲットリシーケンスを順次行っているが、劇症型もやもや病患者で多く発現がみられる変異は現時点では確認できていない。また、劇症型患者に対しては、全エクソン領域に解析範囲を広げているが、劇症型患者に特有の候補遺伝子変異は現時点で検出されていない。 本研究によって、劇症型もやもや病の発病にはp.R4810K多型以外の要因が関与している可能性が示されたが、変異および遺伝子の特定には至っていない。ひきつづき、新規候補変異および候補遺伝子の解析を行っていく。
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