研究課題/領域番号 |
17K16631
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 英明 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (80783331)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Glioma / グリオーマ / 神経膠腫 / IDH / 2-HG / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
近年の網羅的遺伝子解析により、悪性脳腫瘍の神経膠腫においてイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)遺伝子に変異を有する群が存在することが明らかとなった。この群は野生型の群に比較して明らかに予後良好であるが、その原因は未だ明らかとなっていない。IDH遺伝子変異型の腫瘍細胞においては、変異型IDHによって代謝産物の2-Hydroxyglutarate (2-HG)が異常に産生・蓄積されるが、細胞の腫瘍化との関連が疑われ、一般的には治療のtargetとして注目されている。我々はこの分子がミトコンドリアに異常蓄積し、ミトコンドリアの肥大化と機能異常を引き起こし、腫瘍細胞の弱体化を招いていると仮設している。この仮設を実証し、新規治療法の開発に繋げることを目的とする。; 平成29年度はIDH遺伝子変異細胞におけるミトコンドリア機能異常を証明すべく、IDH遺伝子変異型の神経膠腫細胞株(BT142, MGG152)とIDH遺伝子野生型の神経膠腫細胞株(U87, T98)において、ミトコンドリア内膜タンパク質Tim23とミトコンドリア外膜タンパク質Tom20に対する抗体を用いて蛍光免疫染色を行い、ミトコンドリアの量的、形態的違いを調査した。また、手術標本において同抗体を用いたDAB染色を行い、IDH変異型の腫瘍と野生型腫瘍でのミトコンドリアの量的違いを評価した。結果、両者の違いは明らかとならず、この手法においてミトコンドリアの違いを評価することは困難と思われた。 ミトコンドリアの形態や量的な違いを評価するためには電子顕微鏡による観察が必要と思われた。また、ミトコンドリアの機能の違いを評価するために、質量分析法などを用いた評価を今後行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、ミトコンドリアタンパク質に対する抗体を用いた免疫染色を行うことで、IDH遺伝子変異型と野生型の腫瘍細胞におけるミトコンドリアの量的・形態的違いの評価を行ったが、両者の違いを明らかとすることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
IDH遺伝子変異型と野生型の腫瘍細胞におけるミトコンドリアの量的・形態的違いを明らかとするため、電子顕微鏡を用いた評価を行う。また、機能的な違いを明らかとするため、MitoCheck Complex Activity Assay Kit 等を用いてミトコンドリア機能評価を行う。(同Kitでは、ミトコンドリアにおいて酸化される NADH の減光量を測定することで、電子伝達系の機能を評価する。) また、質量分析法を用いてミトコンドリアにおける代謝産物の質的・量的違いを比較することでミトコンドリア機能の違いを評価する。 両者の違いを明らかにできたならば、IDH 遺伝子変異型細胞と野生型細胞双方で、ミトコンドリアにおける2-HGの代謝酵素である2-HGデヒドロゲナーゼ(2-HGDH) の遺伝子ノックダウンを行い、2-HGの蓄積によってミトコンドリアの形態異常、機能異常が出現することを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の繰り越し金が残ったが、次年度に使い切る予定である。
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