研究実績の概要 |
マトリセル蛋白は細胞外マトリックスに属する蛋白群であるが、それ自体は細胞支持組織としての役割は有さない特殊なもので、正常状態ではほとんど発現しておらず、病的状態で発現が増強し、細胞表面の受容体、サイトカイン、他の細胞外マトリックスなどと反応し、細胞間、細胞とマトリックス間の様々な機能を調節する。ガレクチン-3はマトリセル蛋白の1つで、研究代表者及び研究協力者が行った臨床研究では、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(SAH)後に血液中で増加することが確認されているが、その意義は未だ明らかになっていない。本研究ではガレクチン-3の早期脳損傷における役割について検討し、そのメカニズムを解明することを目的としている。 本年度はガレクチン-3のインヒビターであるmodified citrus pectin(MCP)がSAH後の早期脳損傷を抑制するかについて検討した。251匹の野生型(C57BL/6)マウスをランダムにsham+vehicle群、SAH+vehicle群及びSAH+MCP群(0.8ug, 4ug, 16ug, 32ug)に分け、神経学的スコア、SAH重症度、脳含水量、脳内タンパク質発現について調べた。SAHはオスの野生型マウスの左内頚動脈先端部を4-0ナイロン糸にて血管内より穿通させることにより作成した。Vehicle及びMCPはSAH作成後30分で脳室内より投与した。SAHにより脳内ガレクチン-3が有意に発現していた。MCPの各濃度の中で4ugが最も神経症状の悪化と脳浮腫を抑制した。また4ug MCPは、ERK1/2, STAT-3, MMP-9などの細胞内シグナリング関連蛋白を不活化することで、血液脳関門障害とガレクチン-3誘導を抑制した。
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