研究課題
研究開発代表者の近藤らは、研究協力者の青木淳賢教授らとともにマウスモデルで放射線脳壊死が形成されるまでにリン脂質とリゾリン脂質をLC-MS/MSで定量的に調べたところ、照射された脳で顕著な変化が起こることを発見した。照射後、リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール)は全て、非照射群と比べて10日目でわずかに上昇、1か月で2倍~10倍上昇し、2、4、8か月で減少した。一方、リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン: LPC、リゾホスファチジン酸:LPA、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルエタノルアミン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセオール)は照射後1か月で2倍程度上昇し、2、4、8か月とその上昇したレベルが維持された。また研究協力者の瀬藤光利教授らとともにイメージング質量分析を用いて、LPAを可視化したところ、やはり照射後1か月の照射側の脳で顕著に上昇していることが確認できた。放射線が誘発する慢性炎症にリゾリン脂質が関与すると考え、世界に先駆けて報告することになる(現在論文執筆中)。LPC、LPAはミクログリアを活性化することが知られている。ミクログリアの免疫組織染色を行ったところ、照射側に優位にミクログリアが集積し、慢性期まで集積は継続した。LPC、LPAはP2X4(ヒトではP2X7)受容体を介してミクログリアを活性化することが報告されている。P2X4受容体の発現を免疫組織染色のミクログリアでみたところ、活性化ミクログリアと、共発現していた。これらの結果から放射線脳壊死の病態にはLPC、LPAの慢性的な上昇とP2X4受容体を介したミクログリアの慢性的な活性化が関与していることを世界で初めて明らかにした(現在論文執筆中)。
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