研究実績の概要 |
2016年に改訂されたWHO分類において、WHOグレード2~3の成人びまん性神経膠腫(diffuse lower-grade gliomas、以下LGGs)はIDH1/2変異と1p/19q共欠失の有無により3群へ分けるという遺伝子異常に基づく病型分類が採用された。今後は個々のLGGs腫瘍に対し遺伝子解析を正確に行い、それに基づく層別化医療を行うことが求められる。我々は以前、IDH1R132H変異を短時間で検出できる装置(immuno-wall)を開発し、手術中に摘出した腫瘍検体を用いて変異を高精度に検出できることを報告した。本課題では、IDH1変異の他に病型分類に必要なIDH2、TERT promoter, TP53, ATRX変異を検出するimmuno-wallを開発し、LGGsの病型診断と正確な予後予測に必要な遺伝子異常情報を、手術中一度に短時間で解析できるようにすることが目的である。昨今、ATRX変異が1p/19q共欠失とは相互排他的であり、病型分類のサロゲートマーカーとして用いようという機運が世界中で高まっているが、ATRX変異と1p/19q共欠失の関係について詳細な検討はなされていない。我々はまず、遺伝学的背景が明らかな78例のLGGsに対し、ATRXに対する免疫染色を行った。その結果、ATRX変異をサロゲートマーカーとすると、14%の腫瘍で遺伝子異常に基づく分類とは異な病型に分類をしてしまうため、ATRX変異単独での病型分類は適切ではないことを報告した(Yamamichi et al, Brain Tumor Pathology, 2018)。ATRXだけでなく、TERT promoterやTP53変異も同時に解析することで、より正確な病型診断が可能となると判断され、現在それらの変異を短時間で検出できる装置(immuno-wall)を開発中である。
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