研究課題
神経膠腫のサンプリングにおいてNeuro-Navigation Systemを用い、多点で症例ごとに定位サンプリングを行った上、解剖学的位置情報を紐付けたライブラリーの作成を継続している。また部位ごとに腫瘍のゲノム・エピゲノム解析、病理学的検討、ならびに局所再発部位との相関についても検討を重ねた。個体間のコピー数異常の不均一性や、その予後マーカーとしての意義を検証すべく、平成30年度内に多施設共同研究による200症例以上の膠芽腫を対象としたコピー数異常解析を完了した。解析手法としてMLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)を用いた。日本人膠芽腫検体を用いたコピー数解析としてはこれまでで最大規模となる。特定のコピー数異常の組み合わせ(EGFR, PTEN, CDKN2Aなど)を持つIDH野生型膠芽腫が有意に予後不良であることを日本人の膠芽腫コホートで示した。さらにThe Cancer Genome Atlas(TCGA)のデータセットを用いて、コピー数異常の臨床的意義やコホート間の不均一性についても検証を行った。本研究成果については国際学会(Society for Neuro 0ncology)にて発表し、学術誌に投稿中である。神経膠腫における時間的不均一性(クローン進化の過程)を明らかとするため、同一腫瘍の初発、再発時の臨床サンプルから得られた分子生物学的プロファイルの比較を検討を進めている。さらに初発再発間で注目すべき差異を呈するペアを抽出し、全ゲノムシークエンスやマイクロアレイによる網羅的解析を追加している。
3: やや遅れている
個体間における遺伝子解析は順調に症例の集積が進み研究成果が得られつつある一方で、個体内における遺伝子の不均一性の評価が解析効率の観点で一定数をまとめて行う必要があるため、やや遅れている状況である
個体内の不均一性の解析に関してはサンプル(マルチサンプリング、初発/再発)の収集を継続しており、分子遺伝学的解析や組織学的特徴と解剖学的位置情報(物理的距離あるいは腫瘍内における相対的位置関係)との比較検討を行う予定としている。また局所再発部位の位置情報をもとに、局所再発の予測モデルの構築を目指している。
同一腫瘍内の複数部位での遺伝子や病理解析のためのサンプル準備に当初予定より時間を要している。解析効率の観点で、一定数の蓄積がされてから実施するため、そのための試薬購入が延期となり次年度使用額が発生した。次年度においても解析が行われる予定であり、これに充当する予定である。
すべて 2018
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)