研究課題
本研究では脳転移に必要な遺伝子やがん幹細胞マーカーの発現と、実験系でがん幹細胞の脳転移能を検証することでがんの脳転移メカニズムを明らかにすることである。2017年度に転移性脳腫瘍の動物モデルの確立のため、既に確立されている方法の検証としてマウスへ腫瘍細胞の心腔内接種を行なった。血液循環により脳実質への転移が起こり、転移性脳腫瘍が形成されることを確認した。2018年度は同様の方法を用いて、免疫不全マウスにヒト悪性腫瘍細胞株を、心腔内接種によって転移性脳腫瘍モデルを作成し解析をするために、脳への親和性が高い細胞株としてまずは乳癌細胞株MDA-MB-231を用いて実験を行うべく準備を進めた。また既に当研究グループが確立している手法で、脳室内投与によって髄膜播種モデルの作成、解析も同時に行うこととした。生着の確認及び生着した腫瘍細胞をFACSにより回収し遺伝子発現を解析するためMDA-MB-231に標識としてLuc及びGFPを導入すべく、SBI社のLentivector Expression Systemsを用いた。良好に導入されたが、promoterの発現強度の問題でGFPのみ良好に発現し、Lucが発現されなかった。同社の別のvectorを用いて再度導入を試みている。標識が導入された細胞株が得られた後、上記の方法で腫瘍生着を行い、生着した腫瘍細胞を転移巣・血中・髄液中からFACSにより回収し、RNA抽出を行う。RNA sequenceにより幹細胞マーカーを含め網羅的に解析を実施することにより、転移や播種に関わる遺伝子発現の変化について検討する。
3: やや遅れている
標識としてLuc及びGFPの導入をSBI社のLentivector Expression Systemsを用いて試みたが、導入した細胞のpromoterの発現強度の問題で、良好な標識の発現が得られなかったため、別のpromoterを含有したvectorを再度導入している。また転移性脳腫瘍の手術摘出標本についても、幹細胞マーカーの発現について解析を行う予定であったが、標本の質の問題や原発巣のばらつきによって解析に必要な十分な症例数が確保できない可能性があり、現在実施可能な解析について検討中である。
免疫不全マウスへのヒト悪性腫瘍細胞株の心腔内接種・脳室内接種により、転移性脳腫瘍モデル・髄膜播種モデルを作成し、生着した細胞をFACSにより回収し、RNA sequenceやRT-qPCRによる解析により幹細胞マーカーを含む遺伝子発現変化について検討を行う。転移性脳腫瘍の手術摘出標本への検討は、動物実験の解析により得られる予定の遺伝子発現変化の結果を踏まえて、解析対象を絞り、免疫染色やRT-qPCRにより実施していく。
研究計画が予定よりも遅れ、一部実施困難な解析が存在するため、購入予定であった試薬や動物について、購入を行わなかったことによる。これらは次年度に持ち越し、2019年度に継続実施予定の研究のために使用する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Journal of Neurosurgery
巻: 21 ページ: 1-11
10.3171/2018.4.JNS1859