研究課題
がん細胞は正常細胞とは異なり、特殊環境下で増殖や転移などの活発な活動を行うために、さまざまな代謝リプログラミングが起こっている。アミノ酸の中で,グルタミン,セリン,グリシン,トリプトファンの消費ががん細胞で共通して高く、これらのアミノ酸代謝のリプログラミングにより,がん細胞は過酷な環境での生存,増殖が可能となっている。栄養学的非必須アミノ酸の中でセリンは特殊な代謝様式を示し、3ステップの酵素反応[ホスホグリセ リン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH),ホスホ セリンアミノトランスフェラーゼ1(PSAT1),ホスホセリンホスファ ターゼ(PSPH)]で3ホスホグリセリン酸(3PG)から合成されるが、グルタミンフリー培地 で膠芽腫細胞を培養すると、細胞内セリンの著名な上昇が生じ、代謝酵素PSAT1が上昇し、さらにMTHFE2の発現も上昇していた。メタボローム解析を行うと、グルタミンフリーの培地ではセリンの炭素供給はグルコースからくるものと、それ以外からくるものとに二分され、グルコースからの供給はそれほど上昇してはいなかった。これはグルタミンからの炭素供給が遮断されることで他のアミノ酸から供給されることを意味した。グルタミンフリーによるセリンの上昇はグルコースからの炭素供給でない可能性が高いことから、現在代謝リモデリングについて解析中である。また、グルタミンフリー培地での培養ではMTHFFD2が上昇していたが、組織学的に膠芽腫では壊死周囲の細胞でMTHFD2の発現が高いことを確認した、また、膠芽腫の腫瘍中心部と辺縁部でグルタミン量をGC/MSおよびMRSで計測すると、腫瘍中心部ではグルタミン量が低く、栄養不良状態であることがわかり、中心部では辺縁部に比べセリンが有意に上昇していたことから、培養細胞と同様の機序が働いているものと考えられた。
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J Neurooncol.
巻: 142 ページ: 241~251
10.1007/s11060-019-03113-2