研究実績の概要 |
1)マウス脳動脈瘤モデルを用いた,Noxファミリータンパク質の発現の解析:平行平板型(層流)および回転円錐型(乱流)壁ずり応力負荷装置を用いてラット脳 血管内皮細胞(GPNT)にshear stressを負荷し、強度別におけるmRNA、タンパクの発現を解析した。また、ラット 脳動脈瘤モデルを作成し、脳血管における mRNA、タンパクの発現を解析した。 GPNTにおけるNox4のmRNAの発現は、 乱流負荷において有意に発現が上昇した。またその他の炎症系分子については層流、乱流ともに上昇し、特に乱流では強い発現の上昇を認めた。脳動脈瘤モデルにおいて、Noxファミリータンパク質のうち、Nox4の発現のみ上昇し、免疫染色では動脈瘤における頚部周囲の乱流が起こる部位に発現の上昇を認めた。GPNTに対し、Nox4の過剰発現を行うと、層流、乱流負荷にて最も強く発現が上昇する炎症系分 子であるMCP1の発現が低下した。これらの結果よりNox4は脳動脈瘤において、炎症の強く起こる乱流部に発現し、動脈瘤の形成・増大に強く関わるMCP1の発現を 抑制することで保護的な役割を担っていることが予測された。 2)Noxファミリータンパク質のノックアウトマウスを用いた脳動脈瘤の増大・破裂に対する分子メカニズムの解明:マウス脳動脈瘤モデルを作成したが、採取した組織の量が非常に少なく、解析するために十分なサンプルが得られなかった。 3)マウス脳動脈瘤モデルに対するNox阻害薬封入タンパク質ナノ粒子の,脳動脈瘤の増大・破裂抑制効果の検討:1)の結果によりNox4は保護的に作用していることが示唆されたため、今後はNox4を局所で賦活するような新規治療の開発を検討する必要があるものと考えられた。
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