研究課題/領域番号 |
17K16652
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤木 洋二郎 九州大学, 大学病院, その他 (10570773)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | liquid biopsy / IDH1 / digital PCR |
研究実績の概要 |
本研究は神経膠腫患者の腫瘍特異的な遺伝子変異を、患者の体液のみを用いて検出し、最終的には手術による腫瘍組織摘出を必要としない非侵襲的な診断方法の確立を目指すものである。当面の具体的な目標としては、神経膠腫の発生に深く関わり、悪性度や予後とも相関が見られるIDH1/2遺伝子の変異について、患者の髄液検体から抽出したCirculating Tumor DNA(CtDNA)を用いて解析した。 平成29年度には13例の神経膠腫患者(内4例がIDH1変異陽性であることは腫瘍サンプルを用いた解析で確認済み)の髄液検体において、digital polymerase chain reaction (dPCR)を用いて解析を行い、IDH1変異陽性患者において特異的にIDH1 R132H変異を検出および定量することができた。 IDH1変異については、WHO grade IIやgradeIIIの低悪性度の神経膠腫に特徴的な遺伝子変異であり、IDH1変異を有する神経膠腫患者の予後はIDH野生型の神経膠腫患者に比して予後良好であることも報告されている。 したがって本研究により、今後、手術前もしくは手術不能と考えられる神経膠腫患者において、髄液採取のみで診断の絞り込みや予後予測が可能になると考えられる。また、変異遺伝子の定量も可能であることが確認できたため、今後、同一患者において複数回髄液採取を行うことにより、病勢の評価も可能になる可能性も見込まれる。 本研究の成果は、第76回 日本脳神経外科学会 学術総会や、第35回 日本脳腫瘍学会学術集会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、髄液中CtDNAにおいてデジタルPCR法を用いてIDH1変異を検出・定量できることが確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらにサンプル集積を進めるとともに、H3F3A遺伝子変異やBRAF遺伝子変異といったその他の点突然変異に関する解析も行っていく。また、本手法のバイオマーカーとしての有用性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:デジタルPCR用のピペットマンチップ(フィルター付)が割引などにより、想定していたよりも安く購入できたため
次年度繰越金使用目的:消耗品の購入支払予定
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