神経膠腫患者(びまん性星細胞腫、退形成性びまん性星細胞腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、膠芽腫、びまん性正中神経膠腫など)において、髄液検体から採取したcell free DNAに関してdigital PCR法を用いた解析を行い、さらに腫瘍本体から抽出したDNAを用いた遺伝子検査で得られた遺伝子プロファイルと比較したところ、両者はよく一致していた。髄液検体から採取したcell free DNAを用いたdigital PCR法でIDH1遺伝子変異、H3F3A遺伝子変異およびTERT promotor変異を高い感度・特異度で検出および定量できることが確認された。 神経膠腫におけるこれらの遺伝子変異は予後予測および治療反応性予測に有用であり、本研究で確立された髄液検体のみによる遺伝子診断技術(liquid biopsy)は、手術による腫瘍摘出を必要としない低侵襲な診断法として今後も神経膠腫の診療に役立つと考えられた。 本研究結果を基に研究者らは2018年9月より九州大学病院において臨床研究「Liquid biopsy(リキッドバイオプシー)による 脳腫瘍新規診断バイオマーカーの探索」を開始しており、今後2023年9月までの5年間に渡り上記の診断法の実臨床における有用性を評価していく予定である。これにより、神経膠腫の診断のみに留まらず、神経膠腫の病勢評価や治療効果判定におけるliquid biopsyの有用性についても今後検討できると見込まれる。
|