頸動脈狭窄症においてプラーク内の新生血管が破綻し出血を伴う病変は、不安定で脳梗塞を起こしやすい。我々は、その出血のメカニズムに着目し、出血部では局所的に低酸素状態であることを報告してきた。一方で、新生血管数とプラーク内出血は相関が見られなかった。そこで、プラーク内出血の要因は新生血管の脆弱性に起因すると考えるに至った。ペリサイトは、全身の小血管において内皮細胞を裏打ちし血管透過性や強度に重要な役割を果たしているが、頸動脈プラーク内出血における役割は不明である。そこで、まずは頸動脈プラーク内新生血管にペリサイトの存在について調べた。頸動脈内膜剥離術の際に摘出したプラークを免疫組織化学的に検討した。その結果、プラーク内出血が高度なものは軽度なものに比べて、ペリサイトに覆われた新生血管が有意に少なかった。一方で、血管内皮細胞を有する新生血管数は有意な差がなかった。また、ペリサイトを有さない新生血管はペリサイトを有するものと比較すると有意に拡張していることが分かった。このことからもペリサイトが新生血管の脆弱性に関与している可能性が考えられた。以上よりプラーク内出血には新生血管ペリサイトが関与している可能性が示唆された。今回行った我々の検討について論文を執筆し、Journal of Neurosurgeryへ投稿、受理された。これまでに頸動脈プラークにおける新生血管ペリサイトについて検討したものは1編のみである。その報告では、ペリサイトはプラークの石灰化、安定化に寄与すると述べられている。我々の研究でも、ペリサイトの機能解析は頸動脈プラーク安定化の新たな手段につながり得ると考えられた。
|