脳腫瘍(特に髄膜腫)の硬さは、摘出術を行う際には手術の難易度を左右しうる要因である。画像診断で術前評価を行った報告は過去にもみられるが、そのほとんどが定性的な評価法であり定量的な手法での評価は語られていない。本研究では、過去の水頭症の研究で明らかにした、「心電図同期によるMRI検査法で、心周期における拡散係数の変化量(deltaADC値)が脳局所の柔軟性と相関する」という原理を応用し、術前MRI検査のデータと、実際に摘出した腫瘍の硬さとの相関性を探ることを目標とした。さらに過去にはT2強調画像との相関性の報告が多いため、定量値としてT2値を測定することとした。組織の硬さは硬度計を用いて定量的に評価した。また、組織の水分含有率も同時に評価することとした。 2019年度までに、髄膜腫において、水分含有率と組織の硬さに相関関係があり、それぞれをT2値で評価し得ることを見出し、その結果について、関連学会等で報告した。 2021年度は、上記の内容について、”Usefulness of T2 Relaxation Time for Quantitative Prediction of Meningioma Consistency”と題してWorld neurosurgeryに投稿し、掲載された。 deltaADC解析については、一定の結論に結び付くような結果解釈が困難で、最終報告に向けても難渋しており、現在も考察中である。
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