脳腫瘍は、最も初期にがん幹細胞が報告されたがんで、頻度こそ高くないものの予後が悪いがんとして知られている。その原因として、① 周囲の正常組織に浸潤しており、手術で取り除けない ② 脳の正常細胞は放射線感受性が高く、がん細胞根絶に必要な線量を照射できない ③ 使える抗がん剤が限られていることが知られている。 我々はがん幹細胞の放射線抵抗性を明らかにするため、ONS-76という髄芽腫細胞株から、ONS-F8、ONS-B11、ONS-F11という幹細胞性と放射線抵抗性を合わせもつ脳腫瘍幹細胞様細胞株を樹立し、その特性解析を行ってきた。さらに、放射線照射後にONS-F8の遊走浸潤能が増加することを見出し、「放射線照射を契機として脳腫瘍幹細胞が照射野外逃避することが、脳腫瘍の再発に関与する」可能性を考えた。本研究ではA172細胞から幹細胞性の低いA172T1細胞とA172T2細胞を樹立し、A172T2細胞はミトコンドリア代謝と解糖系代謝が亢進していることを明らかにした。さらに、T2は非照射の状態でも遊走浸潤能が高く、低線量(0.5Gy)照射するとさらに遊走浸潤能が亢進することがわかった。さらに、関連遺伝子の探索を行った。
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