研究課題/領域番号 |
17K16669
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 勝久 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (20771893)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 椎間板変性制御 / アポトーシス / Caspase3 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、椎間板細胞・組織の変性変化がアポトーシス応答機構を標的に遺伝子学的に制御可能かどうかを、生体力学的・分子生物学的手法およびノックアウトマウスの表現型解析を用いた多面的なアプローチにより統合的に検討し、椎間板変性疾患に対する今後の臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とした。 本年度は昨年度に引き続き、アポトーシス誘導遺伝子Caspase 3 ノックアウトマウス(KOマウス)を用いて、椎間板変性におけるcaspase 3 遺伝子の果たす機能解析を行ってきた。 In vitro試験として、Caspase 3 KO マウスを野生型マウスとともに腰椎椎間板細胞を単離・継代したのち、血清飢餓を誘導しアポトーシス細胞の算定を行ったところ,Caspase 3KO群で有意にアポトーシス細胞数が少なかった。 次いで表現型解析として、マウス腰椎椎間板を用いた穿刺椎間板変性モデルを作成しin vivo試験を行った。35G針を椎間板に穿刺後2週で超高磁場7.0T-MRI撮影および組織学的評価を行い、Caspase3KO群で野生型マウスと比較し有意に椎間板組織の変性変化が抑制されていた。さらに、マウスの加齢変性モデルを作成し椎間板変性の評価を行ったが、穿刺椎間板変性モデルと異なりCaspase 3KOマウスにおいて椎間板組織の変性変化の抑制はみられなかった。 本研究結果より、外因性の椎間板組織変性にアポトーシス誘導因子Caspase3が関与しており、本遺伝子の発現を抑制することで、椎間板組織の変性制御に有用である可能性が示唆された。通常細胞死に至るべくある細胞のアポトーシスを、人為的に抑制することで細胞の腫瘍化等を引き起こすことが危惧されたが、Caspase 3 KO マウスの椎間板組織における表現型より病理学的に腫瘍化細胞の出現などの異常は認めないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画は椎間板変性疾患に対し、アポトーシスをターゲットとした革新的治療薬への臨床応用を展開するための基盤となる研究を行うため、3年の研究期間内に以下のことを明らかにすることとした。 ①アポトーシス最終実行因子caspase 3活性化に伴い誘導されるextracellular matrix-degrading enzymeの発現調節機構を明らかにする。 ②Caspase 3 ノックアウトマウス(KOマウス)を用いて、椎間板変性におけるcaspase 3 遺伝子の果たす機能解析を行う。 ③椎間板変性度に応じたcaspase3 siRNAによるヒト椎間板細胞のアポトーシス抑制効果について調べる。 これらの研究計画のうち、②のノックアウトマウスを用いたin vitro, in vivo研究が順調に進み、現在研究成果を論文化し投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究予定のうち、今後は以下の研究計画を中心に進める予定としている。 ①アポトーシス最終実行因子caspase 3活性化に伴い誘導されるextracellular matrix-degrading enzymeの発現調節機構を明らかにする。 ②椎間板変性度に応じたcaspase3 siRNAによるヒト椎間板細胞のアポトーシス抑制効果について調べる。
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