研究課題
本研究は椎間板細胞・組織の変性変化がアポトーシス応答機構を標的に遺伝子学的に制御可能かどうかを、生体力学的・分子生物学的手法およびノックアウトマウス(KOマウス)の表現型解析を用いた多面的なアプローチにより統合的に検討し、椎間板変性疾患に対する今後の臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とした。アポトーシス誘導遺伝子caspase 3 KOマウスを用いて、椎間板変性におけるcaspase 3 遺伝子の果たす機能解析を行った。In vitro試験として、caspase 3 KO マウス腰椎椎間板細胞を単離・継代したのち、血清飢餓を誘導しアポトーシス細胞の算定を行ったところ、野生型マウス椎間板細胞と比較しcaspase 3KO群で有意にアポトーシス細胞数が少なかった。表現型解析として、マウス腰椎椎間板を用いた穿刺椎間板変性モデルを作成しin vivo試験を行った。35G針を椎間板に穿刺後2週で超高磁場7.0T-MRI撮影および組織学的評価を行ったところ、caspase3KO群で野生型マウスと比較し有意に椎間板組織の変性変化が抑制されていた。さらにマウス加齢性自然発症椎間板変性モデルを作成し椎間板変性の評価を行ったが,1歳6ヶ月齢でのcaspase 3KOマウスと野生型マウスの椎間板組織変性は同等であった。また、通常細胞死に至るべくある細胞のアポトーシスを人為的に抑制することにより細胞の腫瘍化等を引き起こすことが危惧されたが、caspase 3 KO マウスの椎間板組織に腫瘍化細胞の出現は認めなかった。本研究結果より、外因性の椎間板組織変性にアポトーシス誘導因子caspase3が強く関与しており、本遺伝子の発現を抑制することで椎間板組織の変性制御に有用である可能性が示唆された。
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SPINE
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