研究実績の概要 |
本研究では高齢者の多くが罹患する慢性腎臓病(CKD)によって発生する骨質異常の詳細と,実臨床では検証困難なステージ4以上のCKDに対するビスフォスフォネート(BP)および副甲状腺ホルモン(PTH)製剤テリパラチド(TPD)の治療効果と安全性をラットモデルを用いて調査した. 雄性SDラットに対し,8週齢から段階的に5/6腎摘を行い, CKDモデルを作成した.偽手術(Sham)群,CKD-vehicle群,CKD-ALN群,CKD-TPD群の4群にわけ,それぞれ24週齢からPBS 100μlまたはALN 50μg/kgまたはTPD 20μg/kg×2回を連日4週間皮下投与した.腎機能や電解質,intact-PTH,FGF-23濃度を縦断的に測定した.安楽死後に大腿骨を摘出し,マイクロCT解析,骨形態計測,赤外分光イメージングおよび力学試験に供した. CKDラットは骨脆弱性が問題となるステージ4に相当する腎障害を生じ,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT, i-PTH増加)とリン代謝異常(FGF-23, P増加)を呈した.組織形態学的には高骨代謝回転となり,赤外分光法においても石灰化度,炭酸塩含有量の低下といった骨質異常を呈した.次にステージ4以上のCKDに対するALNとTPDの効果および副作用を検証した.ALN投与により骨代謝回転は抑制され,骨量と骨強度が増加傾向を示すとともに骨基質炭酸塩含有量が回復した(アシドーシス改善を示唆).ALN投与により腎機能は悪化せず,高リン血症が是正したことからALNはCKDステージ4でも安全かつ効果的に使用できる可能性が示唆された.一方,TPDはSHPT状態でもアナボリックに作用し, 骨密度・骨強度を著増させたが,高リン血症が悪化し, 炭酸含有量が減少した.このことから,CKDステージ4以上の患者へのTPD投与は慎重になるべきと考えられた.
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