研究実績の概要 |
関節軟骨はそれぞれ特異な機能を持つ複数の階層が積み重なって形成されているが、その背景にどの様な分子メカニズムがあるのかは殆ど解明されていない。研究代表者は、これまでに行った研究で異なる階層でそれぞれ特異的に発現する3つのRho修飾因子を見出しており、in vitroでの研究によって、これらが階層構造の形成に重要な役割を果たしている可能性を見出している。その可能性をin vivo、in vitroの両面から検証し、関節軟骨の発生・維持についての分子生物学的理解を深め、関節軟骨の再生医療や変性治療に有用な知見を得る事が、本研究の目的である。 本年度は、1年目にやや遅れていたin vivo解析を重点的に進めた。対象とする3つのRho修飾因子の内、表層に特異的に発現するサブタイプ(以下Sとする)のノックアウト(knockout, KO)マウスは、野生型に比して体重が減少する傾向があり、骨格系の形成不全が疑われる。現在関節軟骨のサンプルを採取し、詳細な組織学的解析を行っている。 また、深層に特異的に発現するサブタイプ(以下Dとする)のKOマウスは、Sの場合とは逆に、体重が減少する傾向があった。microCTを用いた解析では、野生型に比して有意に軟骨下骨の厚さが減少していた。これは、in vitro研究から得られた本研究の仮説を裏付ける結果である。Dについても、現在詳細な組織学的解析に着手している段階である。 In vitroでは、1年目に引き続いて、Rho修飾因子の上流、下流のメカニズムの解析を更に進めた。 研究期間全体を通じ、研究開始当初の仮説を、部分的にではあるが裏付ける成果を得る事が出来た。今後の研究により、更に知見を確固たるものとしていきたい。
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